愛着の課題に有効な心理療法とは?カウンセリングやEMDRの選び方

「また、同じ失敗を繰り返してしまった…」

「どうして私だけ、普通の人付き合いができないんだろう?」

恋人や職場の人間関係で、いつも同じパターンに行き着き、深く傷ついていませんか?

その尽きることのない不安や、「どうせ私は見捨てられる」という感覚は、幼少期に心に刻まれた「愛着の傷」が原因かもしれません。

この記事では、一般的な心理カウンセリングとの違いを明確にしながら、トラウマに特化した専門的な心理療法「EMDR」が、トラウマの影響をどのように緩和していくのか、具体的なプロセスを分かりやすく解説します。

この記事を読めば、あなたの苦しみの正体を理解し、自分に合った専門家と出会い、安心できる人間関係を築くための一歩を踏み出すことができます。

なぜ?人間関係でいつも「同じパターン」を繰り返してしまう根本原因

その生きづらさ、あなたのせいじゃない。「愛着スタイル」が関係しているかも

もし、あなたが恋愛や仕事で生きにくさを感じいるとしたら、それはあなたの性格や努力が足りないせいではありません。

その問題の背景には、幼少期の親子関係など、過去の経験によって形づくられる「愛着スタイル(愛着パターン)」が深く関係している可能性があります。

愛着とは、特定の他者(主に幼少期の養育者)との間に築かれる情緒的な結びつきのことです。子どもにとって親は、危険や不安を感じたときにいつでも逃げ込める「心の安全基地」となります。

しかし、何らかの理由でこの安全基地が十分に機能しない環境で育つと、大人になってからも対人関係において不安を抱えやすくなることが知られています。

「どうせ私は見捨てられる」その思い込みを書き換えるには?

ただ話すだけでは変われない?一般的な心理カウンセリングの役割と限界

一般的な心理カウンセリング(傾聴を中心としたカウンセリング)は、あなたが抱えている悩みや感情をカウンセラーが丁寧に受け止め、共感的に寄り添うことで、安心感のある関係性を築いていきます。

「こんなことを話しても引かれないだろうか」という不安な気持ちを打ち明け、それを受け止めてもらう経験は、傷ついた心を癒し、自分自身への理解を深めるために非常に重要です。

しかし、愛着障害のように、過去の辛い記憶(トラウマ)が「中核的信念」や身体の反応(動悸、フラッシュバックなど)として強く刻みつけられている場合、ただ「話す」だけでは変化が起こりにくいケースもあります。

それは、辛い記憶が脳の扁桃体(危険を察知するアラーム)と強く結びついており、理性(「もう昔のことだ」)でコントロールすることが難しいためです。

愛着障害の 心理療法 として注目される「EMDR」とは?

辛い記憶を“再処理”する専門的な心理療法

EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理療法)は、愛着の課題を含めたトラウマケアのための、専門的な心理療法です。

少し難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言えば「脳が本来持っている情報処理の力を利用して、辛い記憶が原因で止まってしまった時間を、安全に動かしていく治療法」です。

私たちは通常、嫌な出来事があっても、例えば、一晩眠れば「昨日はムカついたけど、まあいいか」と気持ちが整理されるものです。これは、睡眠中(特にレム睡眠中)に脳が記憶の整理をしているからだと言われています。

しかし、愛着の傷やトラウマ体験のように、あまりにも衝撃的で辛い記憶は、脳内で適切に処理されないまま「生の形」で冷凍保存されてしまいます。これが、ふとした瞬間に(例えば、上司の表情を見ただけで)当時の感情や身体感覚が蘇るフラッシュバックの原因となります。

EMDRは、治療者がガイドする眼球運動などを用いながら、この「冷凍保存された記憶」に安全にアクセスし、脳が本来持っている力で記憶の再処理(整理整頓)を促していきます。

なぜEMDRが愛着の問題に効果的なのか?

EMDRは、記憶を消去する治療法ではありません。記憶がなくなるわけではないのです。

EMDRの目的は、辛い記憶(例:母親にヒステリックに怒鳴られた場面)と、それに伴うネガティブな感情や認知(「怖い」「私が悪い」)、また、身体感覚(胸の圧迫感、動悸)との「結びつきを弱め、現在や未来への影響を解いていく」ことです。

セラピーが進むと、同じ場面を思い出しても、動悸がしたり、「私が悪いんだ」という強迫的な思い込みに囚われたりすることが減っていきます。まるで、自分を苦しめていた記憶が、古いアルバムの中の「過去の出来事」の一つとして、客観的に眺められるようになるイメージです。

これにより、「どうせ私は見捨てられる」といった中核的信念が、「私はあの辛い経験を生き延びた」「私は今、自分で自分の人生を選ぶことができる」といった、より現実的で適切な信念へと書き換わっていくのです。

セッションの大まかな流れと、期間・費用の目安

EMDR療法は、いきなり辛い記憶を扱うことはありません。専門的なトレーニングを受けたカウンセラーが、あなたの安全を最優先に進めます。

  1. 初回面接・アセスメント:まずは、あなたが現在抱えている悩みや、これまでの背景を丁寧にお伺いします。また、カウンセラーとの相性を確認する場でもあります。
  2. 準備(安定化):EMDRを安全に行うため、安全感を確立するための心理療法を実施します。例えば、リラックス法や感情が揺れ動いたときにご自身を安定させる方法(グラウンディングなど)があります。
  3. EMDRの実施:準備が整ったら、ターゲットとなる記憶(例:子供時代の特定の場面)を選び、眼球運動などを用いながら記憶の処理を行っていきます。
  4. 終結:症状が改善し、日常生活で新たな対処法が取れるようになったことを確認し、療法の終結となります。

通っていただく期間は、問題の複雑さによって個人差がありますが、数ヶ月から1年以上かかる場合もあります。愛着障害のように、長期間にわたる複雑なトラウマを扱う場合は、じっくりと時間をかけることが多いです。

ただ、一定の期間を経ないと効果を全く感じられないということはなく、続けていただく間に少しずつ効果を感じられることもあります。そのため、トラウマの全てを解消しなければ心の悩みが全く改善しないとも限りません。ある程度のところまで改善して、ここからは自分で取り組めそうというところで終結に至ることも多くあります。逆にある程度改善したのだから終結しなければいけない、ということももちろんありません。

費用やセッションの頻度については、各カウンセリングオフィスによって異なります。当オフィスの料金については、こちらのページをご確認ください。

料金ページはこちら

【EMDR体験談】「私が悪い」から「あの時は辛かったね」へ

 以下に簡単な事例をお伝えした上でカウンセリングのプロセスを解説します。ただし、この事例は、複数のクライアント様からよくうかがうお話について、プライバシーに配慮し特定の個人が特定できないよう加工・再構成した架空のものです。

【事例】Aさん(30代・女性)は、「上司の些細な言動で、自分が全否定されたように感じて動悸がする」という悩みで、当オフィスを訪れました。人間関係のパターンを紐解いていくうち、彼女が幼少期に、感情的になりやすい母親の機嫌を常に伺っていた経験が浮かび上がってきました。

プロセス①:過去の辛い場面を特定する

高橋さんがEMDRで扱うことに決めたのは、「小学校低学年の頃、母親の機嫌が悪い日に、ささいなことでヒステリックに怒鳴られた」という記憶でした。その時の母親の恐ろしい形相、部屋の空気、そして「私が悪い子だからだ」と自分を責め、息を殺していた感覚が、今も鮮明に残っていました。

プロセス②:眼球運動を行いながら記憶を処理する

カウンセラーのガイドに従い、眼球運動を行いながらその場面を思い浮かべました。最初は当時の恐怖や胸の圧迫感が強く蘇りました。しかし、処理を続けていくうちに、不思議な感覚が訪れました。

「あれ、なんだか、母親の顔が少しぼんやりしてきた…。あんなに怖かったのに」

まるで、映画のスクリーンで遠くの出来事を見ているかのように、記憶から少し距離が取れるようになっていきました。同時に、当時の自分の姿がはっきりと見えてきました。

「あんな小さい子が、一人で怯えて、ずっと自分を責めていたんだ…」

プロセス③:「私は見捨てられる」が「私は生き延びた」に変わる瞬間

その記憶を思い出した時、高橋さんの中にいつも浮かんでいた中核的信念は「私が悪いから、見捨てられる」でした。

しかし、処理を終えた今、同じ記憶に対して「私は悪くなかった。あの時の私は、ただ必死に生き延びようとしていた」という、新しい感覚が湧き上がってきました。

「上司に否定された」と感じていたのは、今の出来事ではなく、「過去の私が、母親に否定された」と感じた恐怖が蘇っていただけだった。そう気づいた時、長年自分を縛り付けていた呪いから解放されたような気がした、とAさんは涙ながらに語ってくれました。

後悔しないために。愛着障害のケアにおける専門家選びの3つのポイント

愛着障害ケア、特にEMDRのような専門的な心理療法を受ける場合、専門家選びは非常に重要です。安心して過去と向き合うために、以下の点をチェックしてみてください。

ポイント1:EMDRの正式なトレーニングを受けているか

EMDRは専門的な技術を要する治療法です。日本EMDR学会など、公的な学会が認定する正式なトレーニングを受けているかどうかは、信頼できる専門家を見極めるための一つの客観的な基準となります。

ホームページのプロフィール欄などで、資格の有無を確認してみましょう。

ポイント2:親子関係・愛着の問題に関する深い知識と実績があるか

EMDRといっても、扱う分野は様々です(事故、災害、発達障害など)。あなたの悩みが「愛着障害」や「幼少期の親子関係」にある場合、その分野に関する深い知識と臨床経験(実績)を持つカウンセラーを選ぶことが望ましいです。

当オフィス(秋葉原心理オフィスMAY)では、特に親子関係のトラウマや愛着の問題を専門としており、多くのクライアント様と向き合ってきた実績があります。

ポイント3:ある程度話せるというほど良い「安心感」を持てるか

心理カウンセリングにおいて、大切な要素の中に、「相性」や「安全感」があります。「この人になら話しても大丈夫」という安心感ももちろん大事ですが、一方で「何でも話せる感じ」は、まだ話さなくて良いことまで話してしまう、あるいは心の中で触れてしまうリスクも同時に含まれています。不信感で全く話せないのも困りますが、ある程度のところで留まれる、という意味で「ある程度話せる」という感覚を持てることが大事になります。ただ、すぐにわかるものではありませんし、最初の段階ではとりあえず話そうと思っていることを話せる、ということが目安になります。

というと難しく感じるかもしれませんのでもう少しシンプルに、「こんなこと話したら引かれないだろうか」、「『親のせいにするな』と怒られないだろうか」、そうした不安を率直に伝えてみて、その際の応答の仕方や、カウンセラーの雰囲気(トーン)が、あなたと合うかどうかを直感的に確かめてみることも一手です。

まとめ:もう人間関係で傷つかない。自分を信じて生きるために

あなたが長年抱えてきた「生きづらさ」や、「人間関係でいつも同じ失敗を繰り返してしまう」という悩みは、愛着上のトラウマが原因であることも多くあり、現在のあなたのあり方のせいではありません。

一般的な心理カウンセリングで自己理解を深めると同時に、EMDRという専門的なアプローチの方法は、過去の辛い記憶を安全に処理し、「どうせ私は見捨てられる」といったネガティブな思い込みを根本から書き換える力を持っています。

最も大切なのは、信頼できる専門家と共に、安心して過去と向き合うことです。

まずは、あなたが抱えている悩みを、専門家に相談してみませんか?

その一歩が、自分らしい安心した人生を取り戻すための、最初の一歩になりえます

→ EMDRとは?その効果と治療プロセスを専門家が解説

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(オフィス:秋葉原心理オフィスMAY 〒101-0025 東京都千代田区神田佐久間町)

監修者紹介

猪野 哲(いの さとし) 臨床心理士・公認心理師 / 秋葉原心理オフィスMAY 代表

(プロフィールはこちら:https://kokoronocure.com/profile/