心理療法について

 心理療法とは、心理学的な手法を用いて心の悩みの解決や緩和を図ることを言います。

 心理療法の種類は数多くありますが、どの方法においても事前の準備が大切なことは共通しています。

 以下、事前の準備と当オフィスで提供できる心理療法の方法についてご説明いたします。

心理療法・カウンセリングの準備1 ~アセスメント~

(1)トラウマやトラウマによる悩み、(2)不安障害や心身症などストレスによる心身の悩み、のいずれであっても共通するのはアセスメントです。

まずは、悩みやその経過をお聴きしながら、心理療法・カウンセリングを継続しておこなっても平気な状態かどうか、気持ちの準備が整っているか、などを把握するところから始めます。

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 その段階で、現実的に身の安全を確保することなど、環境の調整を優先した方が良い場合もありますし、医療機関への受診が必要な状態の場合もあります。

 その場合は、心理療法・カウンセリングではなく、医療機関など他の機関でご相談されることをお勧めすることもあります。

気持ちの準備が整っているかどうかについての把握が必要なのはどのような悩みであっても、心理療法・カウンセリングを継続して行う場合、時として心身に負担がかかることがあるからです。

 また、悩みの内容や状況によっては、悩みによって心のバランスをとっていることもあります。そこで無理に進めようとすると、心のバランスがうまくとれなくなってしまうこともあります。

そのため一つ一つの気持ちと丁寧に向き合い、必要に応じて整えていくことが、その後の心理療法・カウンセリングの進行において大切な作業になります。

心理療法・カウンセリングの準備2 ~悩みの具体化と将来のビジョンの設定~

 継続しても平気な状態と考えられる場合、次の段階として、現在の悩みやトラウマ、またどのようになりたいかをある程度明確にしていきます。

 そして未来のなりたいビジョンを踏まえて、また、その方の性格や考え方を踏まえて、最も効果的と考えられる方法を決めていきます。

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 トラウマケアの場合、どのようなトラウマがあるかを自覚している場合は、そのトラウマをある程度明確にすることから始められますし、トラウマがすぐにわからない場合であっても、「この悩みはどこからきているのかな」、という探索的なカウンセリングを行うこともできます。

 その上で、ケアが必要そうなトラウマを整理して、具体的な方法と方向性を定めていくこともできます。

 以上が初期の準備ですが、そこで決めたことが変えられないことはありません。

 トラウマケアに取り組んでいるものの、トラウマとは別の悩みをどうにかしたい、ということもありますしその逆もありえます。

 具体的な方法についても途中で変えることはできます。方向性や方法を変える際は、柔軟に相談しながら決めていきます。

 詳しい心理療法・カウンセリングの流れに関しましては、ブログページに心理療法・カウンセリングの流れというテーマでまとめさせていただきました。

 あわせてお読みいただけたら幸いです。

心理療法・カウンセリングの方法

 当オフィスでは、以下の心理療法が可能です。どのような方法が良いかは、状態や状況を踏まえて、ご希望もうかがいながら決めていきます。また、話し合いながら途中で方法を見直すこともできます。

①EMDR

 EMDRとは、Eye Movement Desensitization and Reprocessing;眼球運動による脱感作および再処理法の略称であり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などトラウマケアのための心理療法として始まりました。

 今日ではその応用が広がり、様々なメンタルヘルスに関連する問題や悩みへの対応が可能になっています(例えばパニック発作、感情のコントロール、恐怖症など)。

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 EMDRでは一般的なカウンセリングと異なり、基本的には悩みのもとになっているトラウマ記憶とそれによって刻み込まれたネガティブな自己評価と感情を心に浮かべ、またその際の体の感覚に注意を向けながら、一定のリズムによる軽い眼の運動(眼を左右交互に動かすこと)を行います。

 眼の運動でなければいけないわけではなく、例えば小さな音を左右の耳で聞いてもらう、など一定のリズム感を感じてもらう手続きであればほぼ同等の効果があります。
1回の心理療法の中で、そうした手続きを複数回行います。

 そうすると、脳や身体の自己治癒力(脳内の情報処理能力)が引き出され、結果として、嫌な記憶や思い出に煩わされることがなくなること、また、思い出す頻度が減ることもあります。そして、自分に対する肯定的な感覚を高めていくことができるようになります。

 EMDRは、NHKクローズアップ現代でも「トラウマからの解放~うつ病・身体の痛みの知られざる原因」というテーマで紹介されています。

 約1時間と長い動画ですが、EMDRやトラウマを全体的につかむことができるかと思います。

②ブレインスポッティング

 ブレインスポッティング(以下BSP)もトラウマケアの実践から始まった心理療法ですが、トラウマだけではなくパニック発作、感情コントロールの困難さ、恐怖症、人間関係におけるストレスなど、適応範囲が広がっています。

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 脳と身体を基盤とし、脳科学や生理学などの理論に基づいています。BSPでは見る視点の方向や視線の方向によって問題に対する感じ方や反応が変わることを想定しています。

そのため視点による感じ方や反応の違いを捉えながら、自己治癒力を引き出していく方法です。

③催眠療法、または催眠誘導によるイメージ療法

 暗示という間接的な言葉の表現を用いながら普段とは少し異なる心の状態(トランス状態)に誘導すること、また、誘導後、暗示によって普段の意識状態に戻ってもらう一連の手続きのことを催眠法といいます。

 催眠療法とは催眠法によって普段と異なる心の状態に誘導し、その状態によって得られるメリット(イメージ力や被暗示性という言葉に対する感受性の高進、リラクセーション、注意機能の向上など)を活かして、治療的な課題やパフォーマンスの向上などに必要なワークを行います。

 催眠法や催眠療法に関してはさまざまな誤解があり、そうした誤解に基づいた不安感や怖さ、あるいは逆に過剰な期待感をもたれる方もいます。当オフィスで行う催眠法や催眠療法はテレビでよく見る、いわゆる「催眠術」とは違います。

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 催眠療法が有効な場合は、例えば、普段の意識状態ではリラクセーションが難しい、どうしても理屈にとらわれすぎてだけで考えてしまうことを止められない、イメージしても実感が全くわかない、などの場合です。

 目的により何を重視するかは異なりますが、いずれにせよトランス状態によって生じる心の状態を活かしながら、悩みの解決やパフォーマンスの向上を図っていきます。

 過去のトラウマケア、現在の心身の症状の緩和、未来のビジョンを確立していく場合などでも活用されますが、EMDRと比べると効果はマイルドでゆっくりである場合が多いです。

 ただ、その分比較的安定して進めていくことができます。

④催眠法によらないイメージ療法

 催眠法を用いず、普段とほぼ変わらない意識状態でもイメージを浮かべたり、視覚以外の感覚でもこんな感じかなと感じ方を想像することもできます。

 普段と同じような意識状態から、イメージワークをしながら課題の解決を目指していくことが催眠法によらないイメージ療法です。

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 イメージを活用するのは、イメージの内容もさることながら、イメージをするという体験そのものに自己治癒力を引き出す効果があるためです。 

 理性や論理的思考による悩みの解決が難しい場合に効果的です。

 悩みとどう付き合うか、自分の気持ちが本当はどこにあるのか、何か無理をしていないかという自己理解を促すツールにもなります。

⑤支持的対話による心理療法

 最もオーソドックスな話し合いによるカウンセリングです。心理療法の準備段階もそうですが、上記のいずれの方法を使う場合であっても最初はここから始まります。

 話し合いから始まり、希望によってあるいは状態を見ながら上記①~④の方法で進めることもできますし、そのまま話し合いで進めていくこともできます(状態を見ながら途中で心理療法を試しに実施することも可能です)。

 ”支持的に”というのは、原則として指示や批判はせず、アドバイスも控えめにしながら、その人自身の意向を最大限に尊重しながらお話を聴くことです。

 支持的に話し合うこと、そのこと自体に心理療法の効果が発揮されうることも多くあります。

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 支持的に話し合うことが治療効果となりうる理由の一つは、お話される人にとって、指示や批判をされずまたアドバイスが控えめになることで、「こんなことを話したらどう思われるかな」、「ダメ出しされそう」というような不安が減るからです。

 そうした不安が減ると、話しながら相手にどう思われるかではなく、自分がどうありたいのかということに目が向くようになり、また、自分の気持ちの流れを十分に感じることができるようになります。

 そうなると、自分が何を求めているのか、どこへ向かいたいのか、よりベターな選択は何かということを自分の力で見出していける可能性が高まる、というわけです。

 助言や提案を全くしないということではありませんが、自分の力で見出していけることを目標としているため、控えめな形でお伝えしたり、質問をさせていただくこともあります。

 そうは言っても、最初から全てを話さなければいけないわけではありません。ひとまず話せるところから話していくことが大切です。

 ちなみに、“はなす”ことは「話す」の他に、抱えていたもの、握りしめていたものを「離す」、たまっていたものを「放す」という機能もあります。

 「離す」、あるいは「放す」ことによってゆとりが生まれ、冷静に考えていく余裕が生まれるものです。

 逆にゆとりのない段階では、じっくり考えようにも焦って考えられず、やみくもに解決法を試しても行き詰ってしまいます。そのため、まずは心の重荷を下ろすことが大切になります。