カウンセリングの予約ボタンを前に、指が止まってしまう。
「こんな悩みで行ってもいいんだろうか…」
「うまく話せなかったらどうしよう…」
「親のせいにするなんて、甘えてるって思われたら…」
そう思ってページを何度も開いては閉じ、一人で悩まれていないでしょうか。
でも、大丈夫です。その一歩を踏み出そうとしていること自体が、あなたの人生をより良くするための最初の一歩だからです。
この記事では、カウンセリングの初回に対する「分からない」という漠然とした不安を少しでも減らし、一つ一つ具体的なイメージをお持ちいただけるよう解説いたします。当日の流れや話す内容、料金に関する疑問はもちろん、「こんな話をしても大丈夫?」という疑問や、カウンセリングの基本姿勢についてもお伝えいたします。
カウンセリング初回、多くの人が感じる「5つの不安」
初めてカウンセリングの扉を叩くとき、不安を感じるのはあなただけではありません。むしろ、ほとんどの方が同じような心配や不安を抱えています。まずは、比較的抱かれやすい不安を一緒に見ていきましょう。
不安①「うまく話さないと…」沈黙やまとまらない話への恐怖
「頭が真っ白になったらどうしよう」「話がまとまっていなくて、相手を困らせてしまうかも…」そんなふうに、うまく話すことにプレッシャーを感じていませんか?沈黙が怖くて、何か話し続けなければいけないと思ってしまうかもしれません。
不安②「こんなことで…」悩みが軽んじられることへの心配
「自分の悩みなんて、カウンセリングを受けるほど大したものじゃないかもしれない」「もっと大変な人がいるのに…」と、自分の悩みを過小評価していませんか?勇気を出して話したことを「そのくらいのこと」と一蹴されてしまったら、と考えると怖くなると思います。
不安③「親のせいにしている…」家族の話をすることへの罪悪感
特に親子関係の悩みを抱えている方は、「親の悪口を言うみたいで罪悪感がある」「育ててもらったのに、親を悪者にするなんて…」と、話すこと自体に強い抵抗を感じることもあります。
不安④「どのように進んでいくか分からない」当日の流れが見えないことへの戸惑い
カウンセリングが具体的にどのように進むのか、イメージが湧かないことも大きな不安材料です。「いきなり核心的なことを聞かれるの?」「どんな質問をされるんだろう?」と、先の見えないプロセスに緊張してしまいます。
不安⑤継続することへの迷い
「ある程度継続しないとよくならない、でも今はまだ様々な事情で継続を迷っている」というような、ひとまず初回カウンセリングに来てみたけど継続するかどうか迷っているということもあります。
特にカウンセリングはどこの機関であっても、金額の差はあれど決して安いものではありません。「継続するには今はまだ経済的、時間的な余裕がない」「継続した方が良いかもしれないけど、今はまだかえってストレスになりそう」など、様々なご事情で迷うことも少なくありません。
こうした想いは、全てではないかもしれませんが、初めてカウンセリングを受けようとする方誰しもが大なり小なり持ち得る、ごく自然なものです。次の章から、そうした想いを心にとめさせていただきながら初回カウンセリングの流れを解説いたします。
カウンセリング初日の流れと準備
「カウンセリングがどのように進むのかわからない」という不安を解消するために、初回のカウンセリングがどのような流れで進むのかを具体的に見ていきましょう
ステップ①:ご来談から入室、書類への記入
オフィスに到着したら、まずはご入室いただき、カウンセラーが自己紹介をします。ここには、申し込み票(お名前やご連絡先、お住まいなどの基本情報)の記入や、カウンセリングを進める上で最も大切な「守秘義務」に関する同意書などが含まれます。これは、あなたが安心して話せる環境を守るための、最初の大切なステップです。
ステップ②:カウンセラーとの対話の始まり
書類へのご記入をいただきましたら、初回カウンセリングの進め方から簡単にご説明します。緊張が少しでも和らぐよう、リラックスした雰囲気で始めますので、ご安心ください。また、お話しにくいことや思い出せないことは無理にお話する必要はございませんので、お話できる範囲でおうかがいいたします。
ステップ③:今、一番お困りのことからうかがいます
「今日はどのようなことでいらっしゃいましたか?」という問いかけから、対話が始まります。話の主役は、あなたです。カウンセラーは、あなたが今、一番辛いと感じていること、心に引っかかっていることに、じっくりと耳を傾けます。
ステップ④:経緯や生い立ち(生育歴)を確認いたします
お話を伺いながら、その問題がいつから、どのようにして始まったのか、そして、あなたのこれまでの人生(生育歴)や現在の生活環境について、いくつか質問をさせていただくことがあります。なぜ過去の話をするのか、その理由も後ほど詳しくご説明していきます。
ステップ⑤:今後の見立てと方針の共有
セッションの終盤で、お伺いした内容を基に、カウンセラーがあなたの悩みの背景をどのように理解したか(見立て)をお伝えします。そして、「もし今後カウンセリングを続けるなら、こんな目標を立てて、こんなふうに進めていけそうです」という方針を一緒に話し合います。あなたが「これなら続けてみたい」と納得できることが何より大切です。逆に、続けてみることへの迷いやためらいがございましたら、いったん保留にしていただくこともできます。
ステップ⑥:質疑応答と次回の予約
最後に、料金や次回の予約についてなど、疑問に思っていることをうかがいます。心にモヤモヤが残りすぎないよう、なるべく疑問を一つでもクリアにして初回を終えられるようにしています。
H2:何を話せばいい?話す内容に「正解」はありません
「うまく話さないと」というプレッシャーを感じることに無理はありません。ただ、カウンセリングで話す内容に、正解も不正解もありません。わからないことはうかがうことはありますが、カウンセリングは話し方を評価するような場所でもありません。
H3:話がまとまっていなくても、うまく話せなくても大丈夫
カウンセラーは、仮にお話されることがまとまっていないように感じたとしても、お話の内容を含め、時に生じる沈黙や間、流れから思考や感情のあり方、大切なことを見出すための対話を進めていく訓練を受けた専門家です。言葉に詰まっても、沈黙が流れても、焦る必要はありません。沈黙や間も、あなたにとっては自分の心と向き合う大切な時間になり得ます。
一つの例えとして、複数の事例を組み合わせた架空の事例をお伝えいたします。
以前、Aさんという方が初回カウンセリングに来られました。席についてからしばらく、Aさんはずっと黙って涙を流されていました。「うまく話せなくて、すみません」と仰るAさんでしたが、カウンセラーは「時々お声掛けいたしますが、ご自身のペースで大丈夫ですよ。何を話すかも大事ですが、話せそうで話しにくいその感じに触れていただくことも大事ですし、何よりご来所いただいたことが大切な一歩です」と伝えました。その言葉でAさんの心が少しほぐれ、ぽつりぽつりと、話せるところから話始めてくださったのです。
絶対に話したくないことは、話さなくていい
特にトラウマになるような辛い経験について、初回からすべてを話す必要は全くありません。「まだ話す準備ができていない」と感じることは、すぐに話さなくて大丈夫です。カウンセリングのペースと話す内容は、可能な限りあなたがコントロールできるよう留意して進めさせていただいております。
【最重要】カウンセリングを「安全な場所」にするための3つの姿勢
あなたが「こんな話をしても大丈夫だろうか」という不安を乗り越え、安心して心を開くためには、その場所がある程度安全であるという感覚を持てることが必要です。そうした感覚を持っていただけるように資格を持つ専門のカウンセラーは、以下の3つの大切な姿勢を守ること、あるいは心がけることを訓練されています。
姿勢①:秘密を守ること(守秘義務)
臨床心理士や公認心理師には、厳格な「守秘義務」が課せられています。あなたがカウンセリングで話した内容は、極端な例外(命の危険が予測されること等)を除いてあなたの同意なく外部に漏れることは決してありません。これは、最も基本的で重要な約束です。
姿勢②:あなたの存在をありのまま受け入れます(無条件の肯定的関心)
カウンセラーは、あなたの話を聞いて「それは良い」「それは悪い」と評価したり、個人的な価値観で判断したりすることはありません。極力その方のお話をありのままに、その方がどのようなお気持ちでお話をされているのか想い巡らせながら受け止めるよう訓練されています。
姿勢③:あなたの視点で、あなたの世界を理解します(共感的理解)
私たちは、あなたの靴を履いて、あなたの道を歩いてみようと試みます。あなたの視点に立って、あなたが世界をどのように見て、何を感じているのかを、心から理解しようと努めます。あなたの痛みを感じようとすることも含まれますが、「かわいそうに」というような、外からの同情とは異なります。
親子関係に悩むあなたへ。親の話をすることへの罪悪感は自然な感情です
当オフィスには、親子関係のトラウマに悩む方が多くいらっしゃいます。その中には時に「親の話をすること」に罪悪感を含めた複雑な葛藤を抱えている方もいらっしゃいます。
「親の悪口を言うようで辛い…」
「親を悪く言いたくない」「育ててもらった恩があるのに…」というお話をうかがうことも多くあります。その罪悪感は、絶対もってはいけないものではありません。しかし、カウンセリングで家族について語ることは、誰かを断罪するための「悪口」ではありませんし、そうした罪悪感も含めて心のありように少しずつ触れていくことは、あなた自身が心を整理するために必要な「回復のプロセス」ともいえます。
なぜ過去の話をするの? それは「現在の生きづらさ」の根本原因を探るため
カウンセラーが子供時代のことをお尋ねするのは、理由があります。多くの場合、私たちが大人になってから抱える生きづらさのパターン(例えば、過剰に他人の顔色をうかがう、自分を責めすぎるなど)は、子供時代に自分を守るために無意識に身につけた「生き抜くための術」が、形を変えたものであることが多いからです。過去を理解することは、現在の自分を苦しめている鎖を解き放つための、いわば大切な鍵とも言えます。
辛い記憶を無理に話さなくてもいい。EMDRという専門的なアプローチ
過去を話すのが大切だと分かっていても、辛い記憶を何度も言葉にするのは、それ自体が大きな苦痛を伴います。当オフィスでは、そのような方のために**EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)**という、心身への負担が少ない専門的なトラウマケアも提供しています。これは、辛い記憶の詳細を話さなくても、脳の自然な情報処理を活性化させ、トラウマを和らげることができる心理療法です。(EMDRについての詳しい記事はこちらをご覧ください)
根本解決のために知ってほしいこと:その生きづらさ、「アダルトチルドレン」かもしれません
もしあなたが、子供時代に親の期待に応えようと頑張りすぎたり、家庭内で緊張が絶えなかったりする環境で育ったのなら、現在の生きづらさは「アダルトチルドレン」の状態に起因している可能性があります。
いつも周りに気を遣いすぎる、自分を責めてしまう…思い当たることはありませんか?
アダルトチルドレンの要素を強く持っている場合、例えば、様々な人間関係の中で周りに気を遣いすぎてしまう、何かあると過剰に自分の責任と思いこんでしまう、などの悩みにつながることがあります。
アダルトチルドレンとは、病名ではなく、機能不全家族で育ったことにより、大人になってからも生きづらさを抱えている状態を指す言葉です。それは、単純な性格の問題ではありません。より詳しくは下記の記事で解説しておりますのでご覧いただけましたら幸いです。
「もしかして、私…」アダルトチルドレンだと感じたら。原因から克服の全ステップまで専門家が解説
まとめ:その一歩が、あなたの未来を変える
初回の不安を「安心」に変えるポイントのおさらい
ここまで、カウンセリング初回の不安を解消するための情報をお伝えしてきました。
・初回カウンセリングの目的は「評価」ではなくお困りごととその成り立ちに関する確認と今後の作戦会議
・話す内容に「正解」はなく、まとまっていなくても大丈夫
・カウンセリングは「3つの姿勢」で守られた安全な場所
一人で抱え込みすぎず、専門家への相談という選択肢もご検討ください
この記事をここまで読んでくださったあなたは、すでに自分の心と向き合い、人生をより良くするための一歩を踏み出しています。もちろん、ご自身で工夫することも大事ですし、「今は一人で考えたい」という想いをお持ちの方もいらっしゃるかと思われます。ですが、お気が向いたら一人で抱え込んできた重荷を、少しだけ誰かに預けてみませんか。専門家への相談という選択肢も入れていただけると、人生をよりよくするための可能性が広がります。
まずは「お試し」の気持ちで、心の扉を少しだけ開けてみませんか?
初回のカウンセリングは、いわば「お試し」という側面もあります。カウンセラーとの相性を確かめ、「ここなら信頼できるかもしれない」、「少しやってみようかな」と感じられたら、一緒に歩みを進めていきましょう。あなたの一歩を、秋葉原心理オフィスMAYはお待ちしています。
秋葉原心理オフィスMAY
- 住所:〒101-0025 東京都千代田区神田佐久間町
- (監修:臨床心理士・公認心理師 猪野 哲)
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