こんな方に

トラウマによる悩み、あるいは現在の悩みが過去のトラウマによって起こっていると思われる方、特定の対象に対する恐怖症でお悩みの方、トラウマは思い当たらないものの心身の症状が癖や習慣になっており、お薬だけではなかなか改善されない方は、一度ご相談いただけたらと思います。

以下で、それぞれもう少し詳しくお伝えしたいと思います。

(1)トラウマケアについて

トラウマとは何か?

当オフィスでは、”忘れたくても忘れられず、思い出すとネガティブな気持ちになる、または意識的に思い出されなくても現在の自己評価や心身の症状、悩みなどに影響を与えていると考えられる記憶や思い出”、をトラウマとして捉えています。

 

トラウマによって、生まれやすい悩みの一例について下記に記載します。

【自己評価の低下】

「自分はだめだ」、「自分は弱い」というような否定的な考え方が強くなり、したいと思うこともできないと思えてしまうことが多くなります。なんとか取り組んでみてもちょっとした失敗で「やっぱり自分は…」という考えに至りやすくなります。

 

【思考や認知機能の問題】

思い出したくないことを何度も思い出してしまいます。普段思い出されることもあれば、睡眠中に夢の中に繰り返し現れてくることも起こります。また、気持ちを切り替えようと思っても切り替えられず、集中できなくなることや、すぐに決断できなくなること、などの問題にもつながることがあります。

 

【感情の問題または恐怖症の発生】

トラウマに関わることを見聞きすると、恐怖感や不安感が過剰に出やすくなります。それが恐怖症の源になることもあります(なお、トラウマに関わることや恐怖に感じることを避けやすくなります)。トラウマに関わることを見聞きしなかったとしても、焦りやイライラ感が出やすくなること、逆に感情が沸かなくなる場合もあります。

 

【人間関係への影響】

パートナーやこどもなど、大切な人を愛したいのに愛せない、また、信じたい人のことを信じられなくなることも起こりえます。あるいは人のちょっとした反応に過敏になって顔色をうかがってしまうことなどにより、人間関係がうまくいかなくなってしまうこともよくあります。

 

【身体面の症状】

病院で検査をしてもらっても異常がないのに何らかの身体反応が出ることもあります。例えば、涙が勝手に出てくる、ふと胸が苦しくなる、ある場面に来た時だけ呼吸がしづらくなる、何らかの痛みが一向に消えない、などが挙げられます。

 

以上のような悩みの原因には過去のトラウマが影響していることがよくあります。それぞれ例を挙げて説明しましたが、上記以外の問題や悩みが生じることもあります。また、5つの側面はそれぞれつながっているため、全体的に捉えることが大切です。

トラウマとなりやすい出来事の例

トラウマになりうる出来事というと、命に危険が及ぶような非日常的な事故や事件の被害に遭うこと、あるいは目撃することを想像されるかもしれません。もちろんそうした体験もトラウマとなりえますが、日常的に起こりうる苦痛な出来事もトラウマとなりえます。

 

それぞれの一例を以下でお伝えします。

 

【命に危険が及ぶような事故や事件】

例えば、自然災害の被害、交通事故の被害(場合によっては過失による加害体験も含む)、暴力、強盗などの犯罪被害(夫婦間におけるDV被害も含む)などです。こうした体験の記憶は、強烈な形で残りやすく、時間が経っても過去の出来事として捉えられなくなります。

 

【親子・家族関係におけるトラウマ】

虐待、または虐待とまではいかなくても、厳しいしつけや体罰、またはいつも怒られたり、否定されるようなことを日常的に繰り返し言われることなども、トラウマとして残り現在の自己評価に影響を及ぼすこともあります。また、親とのちょっとしたかけ違いなどによって満たされなかったことなども、納得できない形で残ることもよくあります。

それ以外では、例えば、両親同士が不仲で日常的に暴力や罵りあう姿を目にしていたり、突然、離婚や別居によりどちらかの親に会えなくなるという体験もトラウマ記憶として残ることがあります。

 

【職場・学校におけるトラウマ】

例えば、パワハラやいじめなど理不尽なことを受けた(受け続けた)こと、パワハラやいじめほどではないものの馬鹿にされたり、悪口を言われたり、裏切られたりした体験もトラウマとして直接的、間接的に現在の悩みの原因となりうることも多くあります。その他、仕事や課題における失敗体験もトラウマとして残ることもあります。

 

【喪失体験によるトラウマ】

突然の死別や失恋などによって、信頼する人や大好きな人と突然の別れを余儀なくされること、また予想外の病気などによってそれまでの体の機能や健康を失うこともトラウマとして残ることがあります。例えば、現実を受け入れられなかったり、「あの時~をしていれば」など後悔の気持ちがずっと続いてしまうこともよくあります。

人間には心身ともに自己回復力が備わっているため、トラウマは生活の中で時間の経過とともに自然と消化される場合もあります。
その場合、過去のことは過去のこととして捉え、また、経験の糧として今後に活かされることもあります。

ですが、自己回復力がうまく発揮されず消化されないまま、いわゆる心のしこりとして残ってしまうこともあります。

そうなると、上記の「トラウマとは何か」でご説明したような様々な心身の悩みが生じて、日常生活に支障を来してしまいます。

トラウマがケアされた場合のメリット

トラウマケアとは、嫌な記憶をなかったかのように消す、ということではありません。嫌な記憶を思い出しても冷静な気持ちでいられること、現在の自分にネガティブな影響を与えないようにし、自分の肯定的な側面に気づけるようになることです。

さらに、可能な限り、なりたい自分、なりたい未来のビジョンを見つけて少しでも早くたどり着ける道を探してくことでもあります。

実際に心理療法やカウンセリングを通してトラウマケアを受けられた方のお話に基づいて、どのような自分になれるのかという一例を記載いたします。

【自己評価の変化、向上】

自分の肯定的な面にも目を向けられるようになります。あるいは、自分の良くない面に目が向いたとしても、それはそれとして受け止めることができるようになります。なお、自分に対する見方が変わると、他人に対しても肯定的な面に目を向けられるようになることが多くあります。

 

【思考や認知の変化】

辛いことを思い出しても、それを引きずらなくなり「あんなこともあった」と冷静に考えられるようになります。あるいは、出来事の記憶を忘れたわけではないものの、思い出す頻度が減る、夢に出なくなるようになります。

 

【感情面の変化】

恐怖感や不安感、イライラ感などによる気分の波が少なくなります。また、自分の感情の動きも冷静に捉えることができるようになります。

 

【行動面の変化】

できないと思い込んでいたことが、実はそうではないと思えるようになり挑戦できるようになります。

 

【人間関係の安定】

人の反応や態度、言動に振り回されなくなること、また、パートナーやこども、親など愛したいと思う人を愛せるようになったり、信じたい人を信じられるようになったりすることができます。逆に距離をとりたいと思う人と無理に付き合うことはないと思える
ようになります。結果として人間関係におけるストレスが減ります。

 

【身体面の症状の減少】

トラウマが原因の身体面の症状が消えるか、または和らげることができます。あるいは多少身体面で違和感があっても動揺せず、冷静に受け止めることができます。

 

以上のようにトラウマにはさまざまな形があり、日常に影響を及ぼす場合もあれば、そうでない場合もあります。そのため、トラウマがあるからといって、必ずしもトラウマを全てケアしなければ現在の悩みが解消しないわけではありません。

 

不安障害や心身症などストレスによる心身の悩みの場合、トラウマと直接関係していなくても心身の症状が癖や習慣になって悩みとなることもあります。トラウマの影響が小さいと考えられる場合であれば、直接悩みや症状のケアに取り組むことも可能です。

(2)不安障害や心身症などストレスによる心身の悩みについて

トラウマが影響していなくても、慢性的なストレスなどがきっかけで、または直接のきっかけはわからなくても、いつの間にか不快な感情や思考、体の反応が癖や習慣的になってしまうこともあります。主に不安障害や心身症などに多く見られます。

トラウマの説明と同じくいくつかの側面に分けて、例を挙げながらご説明します。

【認知面・思考面の問題】

考えても解決するわけではないのに、心配なことや嫌なことを繰り返し考えてしまい、目の前のことに集中できなくなることがあります。これはちなみに、心理学の言葉で反すう思考と呼ばれています。

 

【感情面の問題】

漠然とした不安感や心配、あるいは頭ではそんなことはないと思っていることに対して、過剰に不安になってしまいます。
不安や心配の解消にとらわれるあまり、目の前のことに集中できなかったり、避けてしまったりすることが起きます。

 

【身体面・行動面の問題】

明確な病気や健康上の問題があるわけではないのに、ある場面や状況になると動悸や過呼吸などが生じることです。そうしたことが起こるのではないかと不安になり、ある場面や状況を避けるようになることもあります。また常時安定剤などの薬を携帯していないと、そうした場面や状況に出られなくなることもあります。

 

それぞれ3つの側面でご説明しましたが、明確に区切られるわけではなく、それぞれの側面が関連しあって生じていることの方が多いです。どの側面であっても、何とかしようとしても改善せず逆にひどくなったり、気にしやすくなったりすることがもよくあります。

仮に意図的な努力である面を抑えられたとしても、抑えていたものが別の形で現れることもよくあります。例えば、不安は無理に抑えられたものの、知らずのうちに体の症状として現れることが比較的多いパターンです。

 

きっかけはそれぞれでも、こうした悩みが習慣や癖として長く続いている場合、その要因の一つとして自分の心身の状態や変化に注意が向きやすくなっていることが考えられます。

 

そのため、方向性としては、注意のバランスを整えることが大切になります。自分のちょっとした心身の反応にとらわれないようにすること、多少のことがあっても冷静に受け止め、時として受け流したり、いったんは距離をとったりすることが改善の一歩になりえます。

不安障害や心身症などストレスによる心身の悩みがケアされた場合のメリット

こちらも実際に心理療法やカウンセリングを通してケアに取り組んだ方のお話に基づいて、得られるメリットの一例を記載いたします。

 

    【認知面・思考面の変化】

    思考を切り替えやすくなり、考えや言いたいことを整理しやすくなります。また、目の前のことに集中しやすくなるため、今できることに取り組みやすくなります。さらに新たに悩みが生じても”上手な悩み方”をつかめるようになったというお話もうかがったことがあります。

     

    【感情面の変化】

    感情が安定することもそうですが、その後の生活においても自分の感情に振り回されなくなります。そのため、自分の状態も含め、他の人や
    別の状況に対しても冷静に捉えられるようになります。

     

    【行動面・身体面の変化】

    行動面では、これまでできそうもないと思っていたことに挑戦できるようになります。身体面では症状が安定化するほか、ちょっとした違和感が生じても受け流せるようになります。そのため、常時安定剤や市販の薬を持ち歩かずにいられるようになります。

     

    さて、ここまでトラウマケアと不安障害や心身症などストレスによる心身の悩みについて説明させていただきました。

     

    どちらの悩みに取り組むかによって、進行のあり方や得られるメリットが全く変わるというわけではありません。

     

    トラウマケアから始めようとしたものの、”悩み方”をつかんで苦しい感じが和らぐこともありますし、ストレスによる心身の悩みから取り組んでいても、カウンセリングの流れの中で自然とトラウマと思われていたことがケアされる場合もあります。一概に「〇〇をしたから△△になる」とは限りません。その人のあり方や置かれた環境、悩みのあり方によっても異なります。

     

    いずれにせよ、日常の中で一人で抱えて考えるよりも、日常とは少し違う場で、専門的に取り組むことによって気持ちの負担が軽減されることはよくあります。

    これまで、自分で解決法を考えたり、身近な人に相談してみたものの、思うようにいかない場合、カウンセリングや心理療法をご検討されても良いかもしれません。
    きっと何か良い道が見つかります。

     

    具体的な方法は〈心理療法について〉でご説明いたします。心理療法、カウンセリングを行うための準備や流れ、方法を説明します。