トラウマで悩む人へのサポートとバーンアウト

 バーンアウト(燃え尽き症候群)について

 
 トラウマで悩む人へのサポートは、身近な人の理解と協力が大切です。

 そして、サポートの基本は当事者の方のペースでお話をしっかり聴くこと、場合によっては無理に聞き出さないこと、また、言い聞かせたり、回復を急がせたりしないことになります。

 (詳しくはトラウマで悩む人への声のかけ方というページで解説しておりますので、そちらもご参照いただければと幸いです。)

 身近な人が辛い体験をすると、何とか力になりたいと思う気持ちが湧いてくるはずです。

 その気持ちは何より大切です。

 ですが、サポートをしている人ががんばりすぎて疲れきってしまい、意欲を失ってしまうことが起こってしまうことがあります。

 また、親身に悩みを聴いているうちに、サポートをする人にもトラウマ反応が起こってしまうことも起こりえます。

 一つ目はバーンアウト(燃え尽き症候群)と呼ばれる問題で、二つ目は二次受傷と呼ばれる問題です。

 今回は、二つの問題のうち、バーンアウト(燃え尽き症候群)がどのように起り、何に注意すると良いのかについて解説したいと思います。

 

~目次~

一人で頑張りすぎてしまうと…

無力感と長い目で見ること

バーンアウトの兆候

まとめ

 

一人で頑張りすぎてしまうと…

 トラウマに関する相談を持ちかけられたのが自分しかいない、と思うと自分だけしかこの人の力になれない、他の人に頼ってはいけないと思ってしまわれる方もいます。

 ですが自分一人で抱え込んでしまうと、気づかないうちに自分の生活のペースを犠牲にしてでも支えようとしてしまい、気力と体力が失われてしまうこともあります。

 その人の話をじっくり聴くことは大切なことですが、例えば毎日夜中になっても話を聴きすぎてしまうなど、サポートに力を入れすぎると心身ともに疲れてしまうのは自然なことです。

 可能であれば、相談を受けた方が一人で抱え込まないように、理解のある人が数人でサポートをすることが望ましいです。

 実際問題として、「誰にも言わないで」と言われた場合や、その人の周りに自分以外で相談できる人がいないという場合もあるでしょう。

 その場合、率直に専門機関での相談が必要であることを伝えることも一手です。

 当事者の方が気乗りしない場合、相談を受けている方が相談にいきたいと伝えてみるのも良いかもしれません。

 限界を感じ始めたら、どこまでなら支えになれるかということを話し合うことも大切です。

 

無力感と長い目で見守ること

 一生懸命サポートをする方にとっては、当事者の方の状態がしばらく変わらないと、自分のサポートに意味があるのかと自信を持てなくなることもあります。

 そして、自信を持てなくなるとやがてバーンアウトに陥ってしまうという事例も多くあります。

 トラウマ体験へのサポートに限らず、一生懸命取り組んでいることに関して、結果が伴っていないと思うと、無力感に至り意欲を失ってしまうことは自然なことです。

 ですが、トラウマ体験をもっている方へのサポートは、場合によっては年単位で続く先の長い活動になりえます。

 また、回復まで一進一退ということも往々にしてよくあります。

 数回話を聴いてスッキリできた、回復できたという場合ももちろんありますが、そうならない場合や、一見回復していそうに見えたのにまた元の状態に戻ってしまったということもあります。

 まずそのことをご理解いただき、長い目で見守ることが大切です。

 また、地道なサポートが全く効果がない、ということはありません。

 例えば、当事者の方の孤立や、二次的なトラウマへの予防にもなりえます。

 目に見えなくとも基本的なサポートには、確かな意義があることもご念頭においていただければと思います。
 

バーンアウトの兆候

 気分の落ち込みや意欲の低下、自責感、罪悪感などが強くなる場合や、逆に感情が麻痺してしまう場合などが代表的です。

 ただ、いきなりその状態に至るかというとそうではありません。

 最初の兆候として当事者の方に対する怒り、責めたい気持ち、じれったい気持ちから生じること多くあります。

 結果として、ある程度のところまで当事者の方の話をじっくり聴けていたものの、途中から「気持ちを強くもって」とか「いつまで同じことで悩んでいるの」という言葉につながってしまうことも多くあります。

 こうした言葉を出てしまったからといって、サポートをする方が一概に悪いというわけではありません。

 こうした怒りや責めたい気持ちが湧くのは、サポートを頑張っていたものの限界に近づいていること、そしてその限界に対する防衛反応の一つでもあるからです。

 もしも限界に対する防衛反応がないと、サポートをする人も落ち込んでしまい、いわゆる共倒れになってしまうリスクがあります。

 とはいえ、当事者の方にとって責められるような言葉を受けることは辛いことです。

 もしも、サポートをする方の心にじれったい気持ちなどが湧いてきた時は、サポートをする方も辛いこと、限界に近づいていることのサインです。

 その場合は、率直に限界を伝え、身近な人や専門家の力が必要であることを伝えた方が良いでしょう。

 

まとめ

 サポートをする方のバーンアウトを防ぐことは、結果として当事者の方へのサポートにつながります。

 ポイントはサポートをする方も、当事者の方も一人で抱え込まないことです。

 また、当事者の方の心の準備が大前提になりますが、できれば専門家を含めて複数人でサポートをすることが望ましいです。

 少なくとも限界を感じそうになったら率直に伝え、どこまでならサポートができそうかを確認することが大切です。

 トラウマからの回復には年単位で時間を要することがあります。

 すぐに効果を感じられなかったとしても、サポートをする方の支えは確かな意義があるということをご念頭に置いていただければ幸いです。

 最後までお読みいただきありがとうございました。