心の悩みを打ち明けることへの迷い(前編)

 心の悩みに限らず、悩みや問題が起きたとき、たいていの人はまずは自分でどうにかできないものかと考えるでしょう。そのまま解決すれば誰かに相談することはありません。

 自分の力でどうにもならない時、インターネットで調べても手がかりが見つからない時、他の人に相談しようかどうしようかと考え始めます。

 悩みの内容によっては、あるいは相談相手によっては、気軽に打ち明けて相談することができる場合もあります。

 ところが、相手が誰であってもすぐに相談しようとは思えないこともあります。

 悩みを人に打ち明けて相談しようかどうしようかという悩み、いわば悩みに対する悩みが生まれることもあります。

 相手が誰であっても、相談しようと思えるまで、様々な抵抗感や葛藤をもつことは珍しくありません。

 悩みが生まれると、悩みそのものの解決を先に考えてしまいがちです。

 ですが、悩みを人に打ち明けて相談しようかどうしようかという悩みから考えていくことも大切です。

 なぜなら、悩みに対する悩みのあり方を知ることは、悩みに対する向き合い方、悩みが生まれた時悩みをどう捉えやすいのか、悩みによって自分がどうなりやすいのか、自分にとってその悩みはどれくらい重いのか(重要なのか)、などを知る材料になるからです。

 そして、悩みに対する向き合い方などを知ることは、その人に合った解決への方法、解決への道を見出すためのヒントにもなります。

 逆に、悩みに対する悩みを考えずに相談してしまうと、解決しないばかりか話がこじれたり、新たな傷つきが生まれてしまう可能性もあります。

 そこで、心の悩みを打ち明けることへの迷いについて、前編ではできれば自分でどうにかしたいと思う心理を中心に、後編では相談しようと決心したときに働きやすい心理についてお伝えしたいと思います。

 

目次

①「心の悩みならどんなことでも自分だけで解決しなければ…」という心理

②悩みを打ち明けることの恥ずかしさ

③自信を失いたくない心理

④まとめ

「心の悩みならどんなことでも自分だけで解決しなければ…」という心理

 心の悩みに関して比較的よく耳にする考え方です。確かに心の悩みの内容によっては自分で向き合わなければいけない側面もあります。

 最終的にどう対処するかということも、基本的にはその人の判断と責任によるものでしょう。

 だからといって、誰にも打ち明けず自分だけで抱え込んで解決しなければいけない、ということではありません。

 また、一人で抱え込むことだけが責任を全うしているということにもならないでしょう。

 「心の悩みならどんなことでも自分だけで解決しなければ…」という心理の背景には、もしかしたら、心の悩み=気持ち(気合、根性)の問題という誤解もあるかもしれません。

 自分の意志で自分の心をコントロールできる、という誤解も働いているかもしれません。

 確かに気持ちの持ちようや意志の力でコントロールできることもありますが、いつでもうまくいくとは限りません。

 むしろ、意志の力でコントロールしようとするほど、苦しくなったり、別の問題が出てしまったり、という悪循環に陥ってしまうこともよくあります。

 

悩みを打ち明けることの恥ずかしさ

 悩みの内容にもよりますが、自分の内面やあり方と結びついている悩みほど、相手が誰であっても「恥ずかしい」という感覚が生まれることもあります。

 「自分の弱い部分を曝すように思える」とお話される方も、時折いらっしゃいます。

 また、相談するということは、誰かに何らかの助けを求めるということでもあります。

 相手が誰であっても助けを求めるということは、「なんだか自分の立場が下にあるような感覚になる」とお話された方もいらっしゃいました。

 この心理はプライドが高いか低いかということよりも、少しでも自分に自信をもちたい、あるいは、自信を失いたくない、ということでもあるかもしれません。

 

自信を失いたくない心理

 よほど特殊な人生でなければたいていの人は、うまくいったかどうかは別として自分の力で成し遂げ来た、解決してきて人生を歩んでいます。

 自分に自信がない、と思われている人も実は多くのことを自分の力で成し遂げてきています。

 自分の成し遂げてきたことに目が向くかどうかは別として、悩みを自分の力で解決できれば改めてこれまでの自分への自信につながりますし、解決できなかったり、解決できないと思ったりすると自信を失うでしょう。

 もっというと自分のあり方全てが問われているように思えてしまうこともあります。

 すると、この先も自分は誰かに頼らないと悩みを解決できないのではないか、という考えに至ることもあります。

 そうした考えに至らないようにするため、自分でどうにかできないものかと粘りすぎてしまうこともあります。

 

まとめ

 今回前編では、心の悩みを打ち明けることへの迷いについて、できれば自分でどうにかしたいと思う心理について3点ほどお伝えいたしました。

 当てはまると思われたところもあれば、当てはまらないと思われたところもあるかもしれません。以上の3点以外にも相談に至るまでに働きやすい心理は多くあると思います。

 ただ、当てはまらないと思われた読者の方にとっても、悩みに対する悩みがどのようなものかを考えるきっかけになれば幸いです。

 当てはまると思われた読者の方にとっては、今回お伝えしたことは、言われてみたら当たり前と思われるかもしれません。

 ですが、案外意識を向けないと気がつかない場合も多くあります。

 冒頭でもお伝えした通り、悩みに対する悩み、悩みへの向き合い方を知ることも大切ですので、改めて考えてみるきっかけにしていただけたら幸いです。

 最後までお読みいただきありがとうございます。

 次回後編もよろしくお願いいたします。