子どもに対してつい感情的になってしまうのはなぜ?【前編】

親子関係のトラウマと子育て

 

 過去のトラウマの中でも、特に自分の子どもの頃の親子関係におけるトラウマは、子育てや育児、今の自分の子どもとの関係に影響しやすいものです。

 親子関係におけるトラウマは虐待だけとは限りません。厳しい躾や教育もトラウマとなりうることがあります。

 子育てや育児のご相談の中で、「子どもに対して必要以上に感情的になってしまう」、「愛したいと思うのに愛せない」というお話をよくうかがいます。

 じっくりお話をうかがうと、子どもの頃の親子関係の中であったことがトラウマとして残っているために生じている悩みであることが多いです。

 そこで、子育てや育児と、子どもの頃の親子関係のトラウマについて、前編と後編に分けてお伝えしたいと思います。

 今回前編では、子どもの頃の親子関係のトラウマが子育てや育児にどのように影響するのか、ということについて解説したいと思います。

 

目次

親子関係のトラウマによる自己否定感

自分のことのように思う心の動き

再体験による影響

まとめ

 

親子関係のトラウマによる自己否定感

 親子関係に限らず、トラウマが強く残っていると自分に対する見方が否定的になりやすく、自己否定感が強くなります。

 トラウマが強く残っているほど自己否定感が強くなり、自己否定感が強くなるほど自分に肯定的な面があっても、その部分に目を向けにくくなります。

 肯定的な面よりも否定的な面に目が向きやすくなる傾向は、自分以外の人に対する見方にも現れます。

 つまり、自分に対しても、他の人に対しても良い面とそうでない面をバランス良く見ることが難しくなります。

 そのため、自分の子どもに対しても否定的な面に目が向きやすくなってしまいます。

 子どもに対して否定的な側面ばかりに目が向いてしまえば、必要以上に感情的になったり、時には子どもの存在自体が受け入れがたくなってしまいます。

 

自分のことのように想う心の動きと自己否定感

 トラウマの有無は別として、人は誰かを大切に想えば想うほど、その人のことを自分のことのように考えるようになります。

 自分のことのように考えるようになると、その人に対して無意識に自分の過去や現在の姿を映してみるようにもなります。

 自分のことのように考えること自体は、悪いことではありません。

 自分のこととして考えることが、子どもを守ることにつながることもあるからです。

 ただ、トラウマが強く残っていると、トラウマによって形成された自己否定感も子どもに映してしまいやすくなります。

 そして、子どもに対して自分の否定的な面が見えた時、その面を必要以上に責めたくなってしまうことが起こることもあります。

 こどもを大切に想えば想うほど、否定したい自分の過去や現在の自分のあり方が見えてしまって思わず否定しすぎる、という悪循環に陥ることは珍しくありません。

 自分のことのように子どもを想うことも大切にしつつ、自分の体験したことと、子どもが体験していることを分けて考えられれば悪循環は生じにくくなります。

 ですが、大切に想う人を自分のことのように考える心の動きは無意識に働いている部分が大きいため、自分と子どもの体験を分けて考えることは難しくなることも多いです。

 特にトラウマが強く残っていると、自分と子どものことを分けて考えることが難しくなりやすく、子どものことを想ってしたつもりのことが、かえって関係がこじらせることもよくあります。

 

再体験による影響

 再体験(フラッシュバック)とは、何かの拍子に過去のトラウマが急に思い出されたり、夢に出てきたりして再び苦しい気持ちになることを言います。

 何かの拍子にトラウマが突然思い出されて辛い気持ちになっていれば、子どもを冷静に見ることができなくなります。

 場合によっては、自分のこども時代と今目の前の子どものあり方を区別してみることができなくなることもあります。

 例えば、口応えする子どもを見たとき、自分が子どもの時、親に自分の気持ちを言っただけでひどく叱られたことが思い出されて辛い気持ちが呼び起こされる、というお話をうかがったこともあります。

 これも一つのトラウマによる再体験(フラッシュバック)といえます。

 そして、子どもの頃の自分と目の前の子どもが重なってしまい、自分の気持ちを口にできている自分の子どもに対して怒りや羨ましい気持ちが強く出てくることもあるようです。

 すると、感情的になってりすぎて子どもが余計ぐずってしまい、どうしたら良いかわからなるという事態になることが多いです。

 

まとめ

 子どもの頃の親子関係のトラウマは、子育てや育児の悩みに特に影響しやすいものです。

 子育てや育児の悩みの一つに必要以上に感情的になってしまうことや、子どもを愛したいと思うのに素直に愛せないというお話をうかがいます。

 今回前編では、そうしたお悩みに親子関係のトラウマがどのように影響するのか、ということを解説いたしました。

 まとめると、

 ①トラウマが強く残っているほど自己否定感が強くなること、

 ②こどもを大切に思うほど、自分の自己否定感も映し出されやすくなること、

 ③再体験によってトラウマが思い出されると冷静ではいられなくなること、

3点による影響が考えられます。

 次回後編では、子育てや育児の悩みに親子関係のトラウマが影響している場合、そのトラウマをどのように考えると良いのかということについて、解説させていただきます。

 ここまでお読みいただいて、ありがとうございました。

 子育てや育児、あるいはお子様との関係でお悩みがある方にとって、少しでもお悩みの改善のヒントになれれば幸いです。