子どもに対してつい感情的になってしまうのはなぜ?【後編】

親子関係のトラウマとどう向き合うか

 

 前回前編では、子どもの頃の親子関係におけるトラウマが子育てや育児の悩みに与える影響について解説しました。

 特に「子どもに対してつい感情的になる」、「子どもを愛したいのに愛せない」という悩みには、子どもの頃の親子関係におけるトラウマが原因になっているケースが多いものです。

 子育てや育児の悩みに親子関係のトラウマが影響している場合、悩みを改善するためには親子関係のトラウマを克服することが一つの解決策になります。

 今回後編では、子育てや育児の悩みの改善を目指すにあたって、親子関係のトラウマをどのように考えると良いのか、ということについてお伝えしたいと思います。 

 

目次

トラウマを自覚できる場合とできない場合

親子関係のトラウマとの向き合い方

親に自分の気持ちをぶつけると良い?

まとめ

 

トラウマを自覚できる場合とできない場合

 子育てや育児の悩みに、子どもの頃の親子関係が影響している場合、そのトラウマを克服することは一つの改善策になりえます。

 トラウマを克服することで自分や子どもに対してバランス良く見ることができるようになるからです。

 ですが、今の子育てや育児の悩みに親子関係のトラウマが影響しているとわかる場合もあれば、わからない場合もあります。

 どのようなトラウマが原因で自己否定感が強くなっているのか、また、何がきっかけで辛い出来事が思い出されやすいのかということがわかる場合もあれば、わからない場合もあります。

 わかる場合は、例えば「子どもの〇〇な様子を見て、自分が子どもの頃の●●を思い出してしまう」、という形で表現されやすいです。

 逆にわからない場合、「何だかわからないけど自分の子育てがだめに思えて辛い」、「とにかく子どもが悪く思えてしまってイライラしやすい」、という形で表現されやすいです。

 例えば架空の例ですが、子どもの頃、親に自分の気持ちを少し言っただけで叩かれていたという方がいたとします。

 その方が親になって、子どもが少しぐずっている様子を見ると、自分が叩かれたことを思い出してみじめになる、自分の親に怒りが湧いて思わずカッとなる、というお悩みだったとします。

 こうした場合は、何がトラウマになっていて、どういう場合に思い出されやすいのか、ということを自覚されています。

 もし自覚のない場合、子どものぐずっている姿を少しみるだけで、なぜ自分がひどくみじめになるのか、またカッとなるのかがわからないということになります。

 いずれも似たようなお話はよくうかがいます。

 なお、トラウマについてすぐにわかったから良いとか、悪いとかということはありません。

 ただ、悩みの改善に向けて、最初に必要な取り組みが異なってきます。

 

親子関係のトラウマとの向き合い方

 こうしたことから、もし子どもに対して必要以上に感情的になる、愛したいのに愛せないということの原因がわからない場合、まず考えていただきたいことはトラウマの影響です。

 トラウマの中でも親子関係の中でトラウマになっていることもあるかもしれない、と思ってみると良いかもしれません。

 「トラウマというと大げさ」と思われる方は、過去の何らかの記憶が影響しているかもしれないと認識していただければと思います。

 ただ、一人で考える場合は、あまり探りすぎないようにしていただければと思います。

 あくまで、一つの可能性としてトラウマがあるかもしれない、という程度でぼんやり考えていただければと思います。

 もし心理療法・カウンセリングをお受けいただければ、トラウマをケアするかどうかは別として、どのようなトラウマが影響しているのか安全に探していくこともできます。

 すでにトラウマがわかる場合は、そのトラウマやトラウマに関係するいろいろな気持ちを無理に抑えようとせず、まずはありのままに見守ることから始めることが大切です。

 その上で、心理療法・カウンセリングの中でトラウマを過去のものとして克服することも一つの方法ですし、迷う気持ちを大切にしながら、慌てずひとまず見守ることも選択肢の一つです。

 

親に自分の気持ちをぶつけると良い?

 親子関係の中でトラウマがあるのかどうなのか、トラウマを克服した方が良いのかどうか、ということは人それぞれ迷うところではあると思います。

 トラウマを克服することだけが、子育てや育児の悩みを改善するための唯一の方法ではありません。

 親子関係のトラウマを克服することは、いろいろな改善策があるうちの一つの手段です。

 ですが、トラウマの克服を目指すとしても、これはやめた方が良さそうということを一つお伝えできればと思います。

 それは、自分の感情をいきなり親にぶつけたり、話し合いを強く求めたりすることです。

 親子関係のトラウマの克服というと、時々「ひたすら親に今の想いをぶつければ良い」、「気持ちをぶつけあって話し合えば良い」というアドバイスを耳にすることがあります。

 ですが、このアドバイスではうまくいかないことの方が多いようです。

 仮に想いをぶつけて親から謝罪されたとしても、劇的にトラウマが解消されて、子育てのあり方も改善したというほとんど聴いたことがありません。

 むしろ、心にある気持ちをそのまま伝えようとしてお互いが感情的になってしまい、逆に自己嫌悪感が強くなった、というお話もよく聴きます。

 親に自分の気持ちを伝えることが絶対に悪いというわけではありません。

 ただ、もし伝えるとしてもトラウマを克服してからの方が、感情的にならずに丁寧に伝えることができるようになり、新たな傷つきを生みにくくなります。

 

まとめ

 今回後編では、子どもの頃の親子関係のトラウマが子育てや育児に影響していそうな場合、そのトラウマをどのように考えると良いのかということについてお伝えしました。

 何がトラウマになっているのかわかる場合もあれば、すぐにはわからない場合もあります。

 親子関係の中でトラウマを探し出さなければいけないということはありません。

 ただ、子どもの頃の親子関係のトラウマを克服することで、子育てや育児の悩みが改善する例は多くあります。

 トラウマケアを目指すかどうかは別として、親子関係でトラウマがあるかもしれないと考えてみること、もし思い当たる節があるなら無理に抑えるのではなく、まずは見守ることが大切です。

 自分の親に気持ちを伝えるかどうかは、トラウマを克服されてからの方が冷静に伝えられる可能性が高いです。

 前編・後編にわたって最後までお読みいただきありがとうございました。

 子育てをされている方にとって、あるいはお子様との関係で悩まれている方にとって、今回のテーマがささやかであってもお役に立てること、ヒントになることを願っております。