心の専門家に相談を申し込むまでの心のプロセス(後編)

 前編では、心の専門家に相談を申し込むまでの心のプロセスについて、情報収集の段階における心理についてお伝えしました。

 簡単に要約すると、候補の機関をいくつか比べながら、信用できそうなところなのか、今の悩みに対応できるのか(良くなるのか)、コストはどの程度なのか、ということなどを検討することも心の悩みへの向き合い方を知る手がかりになりえます。

 今回、後編ではある程度情報が集まり、いざ行ってみようと思った際に生まれやすい心理についてお伝えしたいと思います。

 

~目次~

①専門家に相談することへの葛藤

②悩んだ末の決断とタイミング

③まとめ

専門家に相談することへの葛藤

 調べた候補の機関が信用できそうで、今持っている心の悩みにも対応していそう、コストに関してもどうにかできるだろう、という見通しがたったとき、候補の機関に行ってみようかなという気持ちも高まってきます。

 その際、働く心理として「ここだったら今の悩みが改善するかもしれない。すぐに改善しなくてもどうしたら良いかわかるかもしれない」、「もし今の悩みが少しでも良くなったら、○○ができる(になれる)かもしれない」、などの期待、または希望の光が多かれ少なかれ生まれてくることがあります。

 ただ、期待が高まると同時に不安も生まれることがあります。

 「自分では良くなると思っても、実際良くならなかったらどうしよう」、「もし期待する効果が得られなかったら、時間とお金がもったいない」という不安ではないでしょうか。

 加えて、「良くならないだけならまだしも、頭ごなしにダメ出しされたらどうしよう、変だと思われたらどうしよう、『相談するほどのことではない、自分でどうにかして』と言われたらどうしよう」など、本意ではないことを言われるのではないか、という不安も出てくるかもしれません。

 そうすると、相談しようと思う相手がたとえ専門家であっても、最初から全て話しにくいという気持ちが出ることもあります。

 一方で話さないと伝わらず、結果として良くならないのではないかという葛藤が出てきても不思議ではありません。

 どこからどこまでを伝えたら良いのかと考えることもあるでしょう。

 また、そもそも相手が専門家であっても誰かに頼ろうとしているということに対して、「自分に対して至らないと思う心理もあった」という話もよくお聴きします。

 期待や不安、それ以外でも色々な気持ちが入り混じる中で、「やっぱり自分でどうにかできないかな」または「専門家に相談するほどのことなのか」と思う心理が出てくることもあります。

 

悩んだ末の決断とタイミング

 「やっぱり自分でどうにかできないかな」または「専門家に相談するほどのことなのか」と思う心理は、調べながら迷っているどの段階でも節々で出てくることもありますし、あまり出ないで「よし行ってみよう」という決断に至ることもあります。

 いずれにせよ、早く決断できた方が良いとか、じっくり考えてから行った方が良いとは、一概には言えません。

 「他の人が聞こえていない声が聞こえる」、「明らかに体が重くて動けない」など統合失調症や重度のうつ病が疑われる場合は、何もしないと悪化し自然治癒することもほぼありません。

 そのため、早急に受診した方が良いと言うことはできます。

 心の悩みの場合は、何もしないからといって必ずしも悪化するとも言い切れません。

 言い換えれば、トラウマもそうですが、心の悩みがあるからといって、すぐにどうにかしないと幸せになれないとか、不幸になるということではありません。

 確かに遅きに失することも現実的にありそうですが、それなら心理療法・カウンセリングを受けてさえいれば、結果が必ず異なるのかというと、単純にそうとも言えないのです。

 そうしたことから、来所するまでに早い方が良いとも、じっくり考えてからの方が良いとも、一概に言えないのです。

 もっと言えば、実際来所したときが、その人なりのベターなタイミングとも考えられます。

 そして、心の悩みの克服、改善を目指す上で大切なことは、来所に至るまで早いか遅いかということではなく、決断にいたるまでにどのような心のプロセスを経てきたかを知ることです。

 というのも、その人が心の悩みをどのように捉え、どう向き合い、どのように工夫してきたかを知るための材料になり、その人に合った改善の方法を見出すことにつながるからです。

 

まとめ

  心理療法・カウンセリングに至るまでの心のプロセスについて、前編と後編を通してお伝えしました。

 必ずしも記載したプロセス通りかというと、そうではないパターンもあるかもしれません。

 とはいえ、相手がどのような専門家であっても、相談しようかどうしようかと思ったときの心のプロセスを知ることが大切です。

 なぜなら、今持っている心の悩みとの向き合い方、捉え方、自分なりの工夫の仕方などを知ることとなりり、ひいては今後どのようにしたら良いかを知るための手がかりとなりえるからです。

 そうしたことから、専門家のもとに行くとしたら早い方が良いのか、十分考えてからの方が良いのかということは一概には言えません。

 むしろ、実際に行ってみた時が、その人にとってベターなタイミングと考えられます。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

 前編と後編を通して、読者の方の心の悩みのあり方について考え、ご自身に合った工夫を見出すためのヒントになれれば幸いです。