子育てに関する悩みやお困りごとで、心理療法・カウンセリングを受けられる方も多くいらっしゃいます。
子育ての悩みをうかがっていると全てとは言い切れませんが、トラウマが影響しているケースも非常に多いです。
特に、トラウマが影響している場合、子どもに対する感情や気持ちのあり方による悩みにつながりやすく、励ましや「〇〇をすれば良い」などのアドバイスだけでは改善しないことも多いです。
そもそも良いアドバイスをもらっても「頭ではわかるんだけど…受け入れにくいし、腑に落ちなくて」、というお話もうかがいます。
今回は、子育てについてよくうかがう悩みとトラウマの影響について大まかに解説していきたいと思います。
①子育てに関する悩みをうかがう中で…
子育て中のお母さん(お父さん)の心理療法・カウンセリングを担当させていただくと、例えば以下のようなお話をよくうかがいます。
・子育てをしていると時々放り出したくなる
・自分の子どもに対する感じ方や接し方に自信をもてない
・子どもに対して過剰に不安になる
・大切に思っているはずだけど、つい怒鳴ったりきつく言いすぎたりして、後悔することが多い
・愛したいと思うのに愛せない
・自分の子どもが羨ましく思えて、妬んでしまう。
・子どもに感情的になりやすい自分に嫌気がさす
子育ての中で、「いつでも子どものことがかわいくて仕方ないから悩むことは全くない。これからもないと言い切れる」、と思うお母さん(お父さん)はそうそういないかと思われます。
子どもへの接し方で悩むこと、また子育てによって自分のあり方が問われているように思えて自信を持てなくなること、思わず意図しない対応をして後悔することなどは、多かれ少なかれどのお母さん(お父さん)も体験されていることではないでしょうか。
時に「自分はだめな親なのかな」と悩み、身近な子育て中の人、子育て経験のある人に話を聞いてもらって励まされたりアドバイスをもらって、安心できる場合もあるでしょう。
逆に、身近な人からアドバイスをもらっても、「本当にこれで良いのかな」、「やっぱりほかの人と自分は違うような気がする」、「どこからどこまでが普通の子育てで、どこからが良くないのかわからない」、「明らかに良くないと思っても感情的になることをやめられない」、など不安や疑念が拭えず、カウンセリングに至る方も多くいらっしゃいます。
②子どもに対して、時にネガティブな気持ちをもつのは自然なこと
子育ての中で子どもに対して、また自分に対して時として嫌な気持ちになったり、ネガティブな感情を抱くのは誰にでもありえます。いつでもポジティブな気持ちでいられるわけではありません。
子育ても子どもとの人間関係ですし、親も人間なので個人的に嫌なことを言われれば、時に憎らしくなったり、嫌悪感が湧いたり、必要以上に心配になったりすることなどがあっても不思議ではありません。
言い換えればネガティブな感情を全てなくすということはできませんが、ネガティブな感情の全てが良くないわけとも言い切れません。
こどもはいつでも褒められることをしてくれるわけではありませんし、一般的にしてはいけないことをしてしまうことや、親が個人的に触れてほしくないことに触れてしまうこともあります。
そうした場合にネガティブな感情が湧いてくることは自然なことですし、親からネガティブな感情を向けられることも時に子どもの成長の糧になりえます。
③ネガティブな気持ちが強すぎる場合とトラウマ
ただ、「こどもへの不安があまりにも大きくて苦しい」、また、「愛したいと思うのに愛せない」、「こどもに対して必要以上に怒りや妬みが生じることがたびたびある」、身近な人に話しても安心できない、というような場合は、その背景に何らかのトラウマが影響している可能性も多くあります。
例えば、両親から虐待を受けていた、虐待ほどではないもののいつも冷たいことを言われ続けた、というトラウマが強く残っている場合、自分の子どもに対してネガティブな感情を持ちやすくなってしまうことが起こりえます。
親子関係とは別のトラウマであっても、何らかのトラウマが強く残っていると、子どもに対して必要以上に感情的になってしまうということも起こりえます。
親子関係以外で子育てに影響しうるトラウマの主な例として、(1)夫婦、またはパートナーとの関係におけるトラウマ、(2)職場・学校時代の人間関係におけるトラウマ、(3)事件や事故に巻き込まれたトラウマ、などが挙げられます。
人によっては、さまざまなトラウマが複数のカテゴリーにわたっている場合もあります。
例えば、親から虐待を受けていて、学校でもいじめを受け続け、成人してからもパートナーからDVを受けてしまっていたという場合などです。
逆に、トラウマは多くあるもののカテゴリーとしては親子関係がメインでという場合もありますし、単発のトラウマがメインという場合もあります。
単発のトラウマというのは、例えば、成人してから被害にあった事故によるトラウマはあるものの、生い立ちの中で親子関係をはじめとした人間関係による積み重なったトラウマはないという場合です。
④トラウマの克服と子育ての悩みの改善
もちろん、トラウマの影響という視点だけで子育てや子どもとの関係のあり方の全てを解明できるわけではありません。
ましてやトラウマを克服すれば子育てが絶対的にうまくいくようになるということはないでしょう。
逆にトラウマをどうにかしないと、子育てが絶対的にうまくいかないというわけでもありません。
ですが、トラウマと向き合い克服したことで、「子どもとの関わり方が安定した」、「余分なイライラがなくなった」、「絶望的だった子育てに希望を見出すことができるようになった」、「自分が安定したことで子どもも安定するようになった」、というお話もよくうかがいます。
そうしたお話をお聴きすると、子育てや子どもとの関わり方には、思いのほか過去のトラウマが影響することもあり、そのためトラウマを克服することも子育ての悩みを解決するための一つの有効な道であると考えられます。
⑤最後に
今回は子育てで起こる悩みとトラウマの関係について、大まかに説明させていただきました。
次回以降のページでも、トラウマと子育てのあり方の関係、また克服されていないトラウマがあると子育ての上でどのような悩みが生じやすくなるのか、今後どうしたら良いのかなどについて少しずつ詳しくお伝えしていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
子育てをされる多くの方にとって、今後の記事が、少しでもご参考になること、また、お役に立てることをお祈りしております。