トラウマの特徴と影響その①~仕組みついて~

 2021119にアップしたブログのテーマにおいて、トラウマとは何か、トラウマとなりやすい例をメインにお伝えしました。

 お読みになられた方で、「トラウマがあるけど、特に問題なく過ごしている」、「トラウマの影響はあるだろうけど、何とか我慢すれば平気」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 

 確かにトラウマがあるからといって、絶対的にケアをしなければ辛い気持ちや症状が一生消えずに続くか、というと必ずしもそうとは限りません。

 例えば、トラウマに対して理解や配慮がある環境であれば、専門的なケアを受けなくても少しずつ自己回復力によって自然と消化される場合も多くあります。

 一方で、「トラウマがずっと消えずに残っていて今も気になる」、「自分では自覚していないけど、今の自分の悩みに過去のトラウマが影響しているかもしれない」と思われる方もいらっしゃるかと思います。

 どのような方にとっても、トラウマへの理解を深めていくことは今後の人生をよりよく生きるための何らかのヒントやアイディアにつながるきっかけになりえます。

 そこで、今回と次回の2部に分けてトラウマの特徴と影響について、もう少し詳しくお伝えしたいと思います。

 今回その①ではトラウマの特徴と影響の仕組みについて、次回その②ではトラウマによる影響、またはトラウマによって生じる悩みについて具体的な例を挙げて説明したいと思います。


~目次~

①はじめに

②トラウマの特徴と影響

③まとめ

 

①はじめに

 最初にご理解いただきたいことは、トラウマは原則として他の人の体験、または自分のそれまでの経験と比較できないということです。

 トラウマの特徴や影響は、経験した出来事の内容によって「軽いか重いか」、「小さいか大きいか」を比較して論じることもできません。

 そのため、「〇〇な出来事はトラウマとなって(ならなくて)、●●な影響が出る(出ない)」ということも一概には言えません。

 また、何がトラウマになりうるか、またトラウマになったとしてその後の人生に影響を及ぼすかどうかということは、心が強いかどうかだけでは説明できません。

 したがって、どのような体験であっても、人によって状況によってトラウマとして残りその後の人生に影響することもあれば、そうならないこともあります。

 これからご説明することは、どのような体験であったとしても、トラウマとして心に残った場合に起こりうる特徴や影響としてご理解いただいた上で、お読みいただければと思います。

②トラウマの特徴と影響

 トラウマの特徴を端的に説明すると、トラウマにまつわる記憶は心の中に異質なものとして残り、いつまでもうまく納まらないことです。

 日常体験する通常のストレスや、ストレスに関する記憶は時間の経過とともに心の中に納まっていきます。

 それに対してトラウマとなりうる出来事の記憶は、そうした通常の出来事の記憶と違い異質なものとして心の中にずっと残ってしまいます。

 例えば、ちょっとした悲しいこと、腹がたったこと、いらいらしたこと、寂しかったことは、一時的なストレスとなりえても必ずしもトラウマとならないこともあります。

 トラウマとなりえないのは、そうしたネガティブな体験をしてもポジティブな記憶と結びついて納まっていくからです。

 ネガティブな体験があってもポジティブな記憶と結びつくと、「そういうこともあるな」とか、「仕方がないか」とか、「ここではうまくいかなかったけど、違うところではうまくいくかな」と思えるようになります。

 これが、心の中で納まるというイメージです。過去のことは過去のこととして捉えられるという感じです。

 トラウマとして心に残り心の中に納まらないというのは、ポジティブな体験の記憶と結びつかないということです。

 ポジティブな記憶と結びつかず心の中でうまく納まらないと、その出来事にまつわる記憶はいわば異物として心の中を彷徨う状態になります。

 心の中を彷徨っている状態であると、例えばトラウマになった記憶に対する時間の感じ方がつい最近のことのように感じられます。

 通常、人はどのような出来事に対しても過去、現在、未来のそれぞれを一定の感覚で捉えて生活しています。

 ポジティブな記憶と結びついたネガティブな体験にまつわる記憶は、「嫌なことだったけど昔の話だな」と思えます。

 ですが、トラウマとなった出来事は過去のことと客観的には過去のことと思えても、「まるで昨日のことのように」感じられます。

 そうなると、昔話として気軽に思い出せる感じがしません。思い出すと気持ちも揺れるでしょう。

 そして、トラウマとなった出来事に関わらず、例えば過去のことばかりに目が向いてしまったり、自分のネガティブな面ばかりに目が向きやすくなります。

 そして、その出来事の記憶を思い出したくないのに突然思い出す、一度思い出すとなかなか切り替わらない、ひどく落ち込む、別の嫌なことが芋づる式に思い出される、ということも起こりえます。

 こうしことが起こりやすくなるのは、トラウマによって記憶された感情や体の反応は、同じような感情や体の反応をしたネガティブな体験と結びつくこともあるからです。

 例えば、パワハラを受けたことがトラウマになっている人が、付随してかつてのプライベートの失恋も思い出し苦しくなる、ということなどです。

 「パワハラと失恋は話が違うのでは?」と思われる方もいるかもしれません。

 確かに客観的には別のことですし、本来は結びつくものではないはずです。

 ですが、例えば、パワハラのダメージがあった時も失恋のショックがあった時も恐怖と一緒に動悸があったという場合、恐怖という感情、動悸という体の反応が共通するため、知らずのうちに別々であるはずのことが結びついてしまうのです。

 そして「だから自分はだめなんだ」とか、「デリカシーがないからあのパートナーも上司も自分を責めた」といった、自分に対する否定的な考えに至りやすくなります。

 

 こちらはあくまで一例ですが、一見無関係のことのように思える出来事が関係のあることとして心の中で結びついてしまい、自分に対して否定的になるということはよくあります。

 心理療法・カウンセリングを進めていくとこうした例に出会うことは珍しくありません。

 理屈で考えれば別々のはずのことが、本人の中では直接結びつき、共通するネガティブな考え方を生むようです。

 こうしたことから、今の悩みと過去のトラウマは、直接的な関係があるとは限らないという考えに至るようになりました。

 言い換えれば、何がトラウマとなるのか、どのようなトラウマが今の悩みにつながるかということはすぐにわからないこともよくあります。

 良くも悪くも人の心は、必ずしも一つ一つの体験を論理的にまとめたり区別したりしているわけではないからでしょう。

 以上を踏まえてご助言させていただくならば、心の悩みについて理性で考えて改善しそうにない場合、いったん論理的な思考で考えることを止めてみることが改善への第一歩になるかもしれません。

③まとめ

 日常のストレス体験がトラウマとなりえるかどうかということは、一般論的な心の強さ、出来事の内容だけで説明することはできません。

 トラウマの基本的な特徴は、それまでのポジティブな体験の記憶と結びつかずに心の中に異質なものとして残ることです。

 異質なものとして残ったトラウマ記憶は似たようなネガティブな記憶と結びついて、心の悩みに至ることがあります。

 その結びつきは必ずしも理屈で説明できる因果関係として捉えられるとは限りません。

 心の悩みは理屈だけでわかるものではないことと似ています。

 お読みになられた方にとって、自分に対していろいろ言い聞かせても心の悩みが改善されない場合、理屈だけで改善するものではないことを思い出していただけると、別の見方につながるかもしれません。

 最後までお読みいただきありがとうございます。

 次回、その②では具体例を挙げてトラウマによる影響や、トラウマによって生じやすい心の悩みについて説明したいと思います。

 もしよろしければ、そちらもお目通しいただけると幸いです。